季節の薬木⑤春-コブシ-(131)

 1972年9月29日、日本は中国共産党が率いる中華人民共和国と国交を結ぶこととなった。当時の田中角栄と周恩来両首相が共同声明を発表し、条約に署名して、日中国交正常化がなされた。
その翌年に中国を初めて訪問した。北京中医薬学院や薬の関連施設を見て回り、晩餐は中国側関係者の招待で大いに盛り上がり、最後には相互に肩を組み合って、合唱となった。みんな泣いていた。その時歌われたのが千昌夫の「北国の春」である。
  白樺 青空 南風 
  こぶし咲くあの丘
  北国のああ北国の春

 北国では寒くて長い冬に終わりを告げ、やっと春がめぐってきたことを実感させてくれる花木である。毛に覆われた堅い蕾が徐々に開き、真白な花弁が覗くころには、春の香りが野一杯に広がり始める。

 モクレン科のコブシは九州、本州、北海道及び済州島に分布している。学名はMagnolia kobusで、コブシがそのまま学名になっている。 日本では「辛夷」という漢字を当てて「コブシ」と読むが、中国ではモクレンを指す。
 コブシの仲間には、モクレン(白モクレン、紫モクレン)、タムシバ(ニオイコブシ)などがあり、これらの蕾は生薬では辛夷(シンイ)と呼び、鎮静、鎮痛薬として、頭痛、頭重感などに用いられる。漢方薬の辛夷清肺湯や葛根湯加川芎辛夷にも配合され、鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎を目標に服用する。また、樹皮は煎じてお茶の代わりや風邪薬として飲まれている。
 なお、コブシの名は果実の形が拳(こぶし)に似ているところから付いた名前です。

 辛夷は、多くの俳句や川柳に詠まれているが、子規や虚子はコブシの蕾を詠んでいる。

  花籠に 皆 蕾なる 辛夷かな   子規
  立ちならぶ 辛夷の蕾 行く如し  虚子

 写真はコブシ(上)とタムシバ(下)です。
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