貝食(志摩のアワビと桑名のハマグリ) (143)

 台風一過、秋晴れのある日、伊勢の志摩観光ホテルに宿泊する機会がありました。このホテルの名物料理に「鮑ステーキ」があります。鮑は一般には刺身や網焼きのイメージが強いのですが、ここの鮑はステーキ仕立てで出てきます。
 ナイフを入れた時の柔らかな感触は驚きです。これは大根とともに煮ることで、大根中のジアスターゼが鮑の肉質を柔らかくするからだそうです。塩加減も絶妙です。ソースは2種類あって、焦がしバターの風味豊かな「ブールノワゼットソース」は鮑の味をしっかりと楽しみたいときに、香草バターを使ったブルギニヨンとブールブランの2種類のソースを合わせた「2種類の香草バターソース」はソースと鮑の両方を楽しみたいときにチョイスすればよいとのことで、よくばりの私には、当然「2種類の香草バターソース」を選びました。
 鮑の旬は6~9月ごろです。鮑には血を補い、血の巡りを良くし、肝の働きを緩和し、眼精疲労や充血、ストレス、不眠を改善する働きがあります。また、体の火照りを冷まし、水分代謝を促し、むくみの緩和にも効果があります。
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 翌日、桑名の蛤(ハマグリ)に挑戦ということで出かけました。賢島から桑名へ近鉄特急で2時間。蛤料理の前に桑名見物とのことで「六華園」を訪れました。山林王と呼ばれた桑名の実業家、諸戸清六の邸宅です。日本家屋と洋館が合体した一風変わった屋敷ですが、洋館部分は、鹿鳴館を設計したイギリスの建築家ジョサイア・コンドルの設計です。揖斐・長良川を望む広大な敷地建物は国の名勝に指定されています。
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 蛤料理は、創業90余年の老舗割烹「日の出」で戴きました。桑名の蛤は、
「その手は桑名の焼き蛤」のことわざがあるように、「その手は桑名の焼き蛤とは、うまいことを言ってもだまされない。その手は食わないぞ」というしゃれで、おいしいもののたとえに使われてきました。なかなか食する機会がなかったのですが、やっとその機会に恵まれました。蛤ナベに舌づつみを打ちました。 
 蛤は体に潤いを与え熱を冷まし、むくみやのぼせ、咳・痰の改善に効果があります。また、鉄やビタミンB12を多く含んでいるので、貧血の予防にも有効です。

 桑名の蛤はその大きさで有名ですが、川の水と海水が混じる吃水域に生息していて、貝がらは薄く、肉厚の身が特徴です。料理に供するのは、畳の目が4から5ほどの大きさのものが標準だそうです。5、6年経ったもので、貝の表面に着く縞模様の数で年数が分かります。
同じ大きさの貝を揃えて、王朝時代の楽しみの一つだった貝合わせの貝にします。2枚の貝はそれぞれ出っ張りと凹みで合わさっていて、それは2つと同じものがありません。
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 この二日間の貝食は、「磯の鮑の片思い」から、「ぴたりと合った貝合わせ」へと、なんだかき返った縁起の良い旅となったようです。

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