辰年に竜の名の付く生薬あれこれ (121)

 今年は辰年。新年にあたり、「竜」のつく薬をあれこれご紹介します。

竜胆 リュウタン(竜胆)と書いて「りんどう」と読みます。漢名の竜胆からなまったものとも言われています。
 胆のつく生薬に、苦いことでも有名な「ユウタン(熊胆)」熊の胆のうがありますが、この竜胆も極めて苦い生薬です。竜胆の名は、葉が竜葵(犬ほおずき)に似て、胆のように苦いことからきています。
 苦いものは古来、洋の東西を問わず、胃ぐすりとして用いられてきました。千回振りだしても苦いとされる「センブリ(当薬)」も同じリンドウ科に属します。西洋では、リンドウの根を「ゲンチアナ」と言って、健胃薬にはなくてはならない存在です。
 苦味の主成分は、ゲンチオピクリン、スウェルチアマリン、タウリンなどの配糖体です。この苦味成分が胃酸の分泌を盛んにし食欲を起こさせてくれます。
 しかし、漢方においては、健胃薬としてのみでなく、火を消し(消炎、解熱)、湿をとり、下降を促すものと捉えています。心臓が亢進しているときに服用すると、動悸が治まります。
 竜胆は消炎、解熱、健胃薬ですが、特に肝胆の病気(口が苦い、眼の充血、耳垂れ、排尿痛など)に用いられます。竜胆が主薬の漢方薬「竜胆瀉肝湯」は急性肝炎、膀胱炎、尿道炎、耳・目の疾患に著効があります。
 秋の草花が次々と消えていく中、山地の日だまりに気品高い濃紺の花を咲かせるリンドウからは想像もできないことです。
  冬早き霜葉の中に咲き出でて むらさき寒し竜胆の花  太田水穂
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竜のヒゲ  蛇のヒゲともいい、その塊根は生薬「麦門冬」として、滋養、強壮、咳止め、痰切り、解熱、利尿に用いられています。麦門冬が主薬の「麦門冬湯」(麦門冬、半夏、大棗、人参、甘草)は、こみ上げてくるような激しい咳や、痰が粘っこく出にくい症状を目標に使います。特に、大病後の非常に衰弱した人や、老人などで咳が出て、痰の切れが悪く、のどが詰まる場合に用いると効き目があります。

竜骨 竜骨は大型の哺乳動物が化石化した骨で、主として炭酸カルシウムからなっています。
漢方処方では精神安定作用を目的に配合されています。牡蠣(カキの殻)と一緒に使われることが多く、桂枝加竜骨牡蠣湯(体質の虚弱な人で疲れやすく興奮し易いもののの次の諸症:神経質・不眠症・小児夜泣き・小児夜尿症・眼精疲労)や柴胡加竜骨牡蠣湯(精神不安があって、動悸、不眠などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸・不安・不眠)・神経症・更年期神経症・小児夜泣き)に用いられます。

地竜 ルムブリクス科蚯蚓(ミミズ)の全体を乾燥したものです。味はしおからく、性は寒のため、解熱薬として用いられます。主成分にルンブロフェブリン、ルンブリチン、多種のアミノ酸を含み、解熱のほか、気管支拡張、降圧、溶血、痙攣性収縮、利尿に効果があります。

タツノオトシゴ 生薬名を海馬といい、ヨウジウオ科のオオウミウマ、サンゴタツの内臓を取って乾燥したものです。さらにヨウジウオ科のトゲヨウジは海馬と同じ仲間で、海竜(かいりゅう)といいます。いずれも薬性は甘、薬味は温で、効能もほぼ同じです。
効能は腎陽虚(じんようきょ)のインポテンツや勃起不全、夜間頻尿、慢性の咳などだけでなく、肝にも働き血の流れを良くする働きもありますので、難産の時にも使います。
海馬のほか蛤蚧尾(ごうかいび)、海狗腎(かいくじん)、鹿腎(鹿のペニスと睾丸)など19種類の生薬の入った海馬補腎丸は、海馬を使った中成薬(中国で作られた漢方薬)として一番よく知られています。

竜眼 ムクロジ科リュウガンの果肉で、ショ糖、有機酸、窒素酸化物などを含有し、老化の徴候に対処する生薬としてまた出産後の強壮薬として使用されています。また、不眠症や疲労、めまいの治療にも用いられています。神経の興奮を鎮めリラックスし、物忘れや不眠症状、病中病後の体力回復に効果があります。

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