椿と山茶花 (120)

 新年早々、ある恒例の互礼会に出席しました。新年の挨拶を交わしながら、会場を見渡すと、飾り花に椿(ツバキ)の花が活けてあって、新春を新たにしたのです。
 「椿」は国字で、中国の「椿(chun)」は別の植物です。日中辞典を見ますと、中国で「椿は山茶」とありますが、日本で山茶は山茶花(サザンカ)です。
 少しややこしいことになりましたが、ツバキとサザンカの違いについて整理をしておきます。
 両花は共にツバキ科ツバキ属のかなり近縁の植物です。見かけは非常によく似ていますが、サザンカは一枚一枚花弁が散り、ツバキの花は花弁全体が一緒に落花します。これは、サザンカの花弁は離弁ですが、ツバキは根元でくっついているからです。さらにスバキの数十本ある黄色い雄しべの根元も一緒になり、花弁ともくっついているので、花の散るときは雄しべも付いて花全体が落花することになります。
 中央にある一本の雌しべは頭柱が3裂し、子房に毛があるのがサザンカで、毛がないのがツバキです。
(上:ツバキ、下:サザンカ)
 
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 椿の種子には60%の脂肪油が含まれています。この脂肪油は、軟膏基剤、頭髪用、食用、燈火用と繁用されています。また、この脂肪油は不乾性油で粘着性が少なく、空気酸化による酸化物もじにくいことから、精密機械油等にも利用されています。山茶花にも椿と同様の脂肪油が含まれていて、ツバキ油と同様に用いられます。
 材が堅く緻密なため、種々の細工物に用いられたりします。また、枝、葉を焼いて作った灰は、紫染めの媒染料として使われたことが、万葉歌にも見られます。
 
  紫は灰さすものそ 海石榴市(つばきち)の 八十の衢(ちまた)に逢へる児は誰 (巻12-3101)

 奈良県三輪大社の南、長谷詣で栄えた古代の市場、海石榴市(つばきち)の巷がありました。三輪山麓には椿の並木を植えていたので、その名が起こったものと思われます。
 歌の大意は、「紫染めには椿の灰から取った灰汁に浸けた、その海石榴市の四通八達した巷で逢っているあなたは誰なのですか」、女性に名を尋ねる求婚の歌です。多くの男女が集まり、歌を詠み交わし求婚の機会とした「歌垣」が催しされたのがこの巷だったのでしょう。

 ツバキは椿の字の通り、春の季語、サザンカは冬の季語です。サザンカの花が終わろうとすると、ツバキの花が早い春を連れてきます。

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