クリスマスと柊(ひいらぎ) (112)

 12月に入ると悲しい知らせが参ります。近親者のご不幸による年賀状欠礼のハガキです。
 その中に一枚、こんなハガキがありました。
 「当家はクリスチャンなので、神仏の慣習は関係ないのですが、日本の習慣に倣い、年賀状を失礼いたします。皆様には良いお年をお迎えください。」
 
 日本では古来より、海外から多くの文化や技術を受け入れ、従来の日本の文化に融合させてきました。宗教においては、仏教導入時の神道との争いや、キリスト教弾圧の歴史があったものの、現在は、神道、仏教、キリスト教は共存し、正月は神社にお参りし、仏教で野辺送りし、クリスマスを祝って、一年を過ごします。

 クリスマスといえば、その飾りにセイヨウヒイラギ(西洋柊)を用います。モチノキ科の常緑小高木で美しい赤い実をつけます。
 セイヨウヒイラギがキリストに関係するのは、キリストがかぶったイバラの冠がセイヨウヒイラギの棘のある葉となり、その流した血が赤い実になったとの謂われからきています。クリスマスに教会で飾られたセイヨウヒイラギを持ち帰って自分の家の部屋に飾ると、その部屋は翌年中、幸せで清らかになるといわれています。
 また、北欧では、森に生えているすべての木の中で最も尊い木とされ、王冠の印にも使われ、国王を象徴する樹木とされています。
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 一方、日本において関東より以西に自生するヒイラギ(柊)はモクセイ科の雌雄異株の常緑高木で、初冬の11月ごろから白い可憐な花を咲かせます。同じ科のキンモクセイが妖艶な香りを撒き散らすのに比べ、ヒイラギは冬に向かって咲く花の少ない季節に、清純な香りを漂わせます。
 柊は厄除けの木として、よく庭に植えられてきました。この風習は随分昔から行われていたらしく、古事記には、日本武尊が東征の際、「比々羅木の八尋矛」を賜った話や、土佐日記にも、「小家の門の注連縄の鰯の頭、柊らいかにぞいひあえなえる」とあり、柊に魚の頭を刺して魔除けにする風習が記されています。これは昔、鬼が村に入ってきて空腹のあまり村人を食べようとしたが、柊の葉の棘で目を刺されて退散したという古い伝説にもとづいていて、今でも節分の行事として受け継がれています。
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 柊の葉の棘は老木になるとなくなってきますが、人間も同じで、若い時は刺々しく、人に嫌われた人も、年を老いてくると性格が丸くなって好々爺となる、人も木も同じです。いや、中には、年をとるほど頑固になって、人に嫌われる老人もいるようで、ほどほどの棘を残して、人に嫌われないよう、最終の人生を楽しむのが老人のき方かもしれません。

 余記:四季の樹木は、春は椿(つばき)、夏は榎(えのき)、秋は楸(ひさぎ)、そして冬は柊(ひいらぎ)です。
 楸はあまりお目にかからない名前ですが、キササゲといったらお解りいただけると思います。

 

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